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頬杖は、たとえ短時間でも、あごに5キロの力が加わることを意味している。
歯を120グラムの力で噛みしめると、わずか20分で歯を支えている骨がこわれ、歯が沈み込むことがわかっている。
くり返し5キロの力が加われば、歯に負担にならないはずがない。
ほおを支えている手も、歯にとっては脅威だ。
手が硬い骨でできているため、この骨で圧迫すれば、歯形やほお骨はたやすくへこんでしまう。
右手で頬杖をつくクセがある人の場合、右側の歯列が強く押されて歯が動き、そのため右側のあごがゆがんで、右ほおがへこんでしまう。
たとえば、側の机の上でうつぶせで眠る、とあるように、机の上で前歯のあるあごに手を当てて居眠りするクセがあるとしよう。
子どもであれば、半年でもこのクセをつづけると、歯形のアーチが崩れ、やがて台形に変形してしまう。
子どもほど短期間ではないにしろ、おとなの場合も、10〜15年ほどで目に見えて歯形は変形する。
歯は一本で動くのではなく、両隣の歯に加えて歯のまわりの骨まで道連れにして移動するから、頬杖のクセをやめないと、複数の前歯がグラついたり、歯が伸び出してしまう。
ただし、頬杖は寝相と違って、起きているときに出るクセだから、意識さえすれば比較的やめやすいはずだ。
それに、頬杖をつく人は、座っている姿勢も悪いという共通点がある。
それゆえ、デスクワークのときは猫背にならないように注意し、ワープロやパソコンを打つときは、頭、首、背筋が一直線になるよう意識したい。
そしてイスは浅めに腰かけ、ひざの角度が直角になるよう、イスの高さも調節しよう。
これまで何度もくり返し述べてきたが、からだの左右一方だけを使う不自然な姿勢は、からだを悪くする原因になる。
寝相や座る姿勢ばかりでなく、立つ姿勢も大切である。
たとえば、立つときに足を交差させる「クロス立ち」も不自然な姿勢のひとつで、骨格全体に複雑なゆがみを生み、いったんクセになると、矯正にひと苦労である。
かつて学校で教わった、片方の足に体重を乗せる「休め」の姿勢もよくない。
体重を乗せている側の足に負担がかかり、背骨、骨盤のゆがみをもたらすからだ。
正しい立ち姿勢は、口と肛門を閉じ、背筋と首筋を伸ばして5メートルほど前方を見つめ、横隔膜で鼻呼吸をして両足に均等に体重を乗せる姿勢である。
このとき大切なことは、上下の歯は間を1〜2ミリ開けて、唇を閉じること。
決して歯をかみしめてはいけない。
歯一本にかかる力は210グラムだが、持続的に力を二十分間加えると歯の骨の表層が吸収され、歯のグラつきにつながるというのである。
そのため、頻繁に歯を食いしばったり、歯ぎしりをしていると、歯周病や顎関節症などになりやすくなる。
歩くときもこの姿勢を保ち、両足でしっかり地面を踏みしめて立ちたい。
ふだんの立ち姿勢にも緊張感をもって、よい姿勢を保つことが大切なのである。
近年の健康志向は爆発的なスポーツ人口を生んだが、いつのまにか、スポーツをすることはからだによい、スポーツをする人は健康であるとのイメージができあがってしまったようだ。
たしかに医者は何かにつけて「運動不足ですね。
運動はしてますか」というし、スポーツをしたあとの汗は、「健康的で、さわやか」と思いがちだ。
はたしてそうであろうか。
本当にスポーツをすることはからだにいいのだろうか。
医学的に見て、あるいは力学の観点から見ると、一見、健康をつくるスポーツの意外な側面も見えてくるのである。
マラソンや水泳はどちらも人気のあるスポーツだが、走ったり泳いだりと全身を使う運動だから大量の酸素を必要とする。
ウォルフは「人間の骨の形は長期間の機能にしたがって、それに適応した形に変化する」という法則を見いだしたが、これは、ある特定の運動を続けると、その運動に応じた形に骨が変形するということで、プロスポーツ選手のからだがそれにあたるだろう。
からだを鍛えるということはスポーツの目的でもあるのだが、プロスポーツとは違うのだから、一般の人が過剰な鍛えをともなったスポーツはやらないほうがいい。
激しいスポーツをつづけることはあまりに危険であり、健康づくりとは異質なものなのである。
もちろん、スポーツはからだに悪いからやってはいけないといっているわけではない。
スポーツを通して仲間をつくり、交友関係を広げることもできるし、運動した満足感とか、気分転換を図れるなどメリットも多い。
それゆえ、趣味でスポーツをするのはかまわないが、あくまで無理は禁物。
そのうえ、テニスや野球、ゴルフのようなスポーツは、利き腕を酷使し、からだの左右どちらか一方に偏った運動や姿勢をくり返す。
そのため、過剰なスポーツはからだの左右差やゆがみを助長してしまう。
プロのテニス選手や野球のピッチャーの腕は、左右の長さが違うのがふつうで、利き腕のほうを過度に鍛えるため、遠心力で利き腕の骨が伸びてします。
からだを左右均等に使うストレッチ体操とか、腹式呼吸に合わせて行う太極拳、ほどほどのペースで行うウォーキングなどは、健康のための健全なスポーツといえるかもしれない。
そしてさらに大事なことは、スポーツや運動を終えたあとにたっぷり休むこと。
これは、からだというより、骨休めである。
この骨休めを怠ると、さまざまな病気を引き起こすことになる。
とくに小学校低学年からサッカーやバスケットなど過激なスポーツをつづけていると、思春期頃に無気力症や白血病など重篤な病気にかかる恐れがあるから、くれぐれも骨休めは怠らないこと。
スポーツや運動のあとには、十分な骨休めの時間を取る必要がある。
それは運動後に限らず、日々の生活のなかでも睡眠時間を十分に確保しなければならないことを意味している。
娯楽のために、あるいは仕事やスポーツに熱中するあまり、睡眠時間を削ってまで楽しんでいる。
なかには、「睡眠時間なんて3、4時間で十分、熟睡しているからね」という人もいるほどだ。
たしかに睡眠の専門家を自認する学者のなかには、「質の良い睡眠であれば、短時間で十分」という説を唱える人もいる。
しかし、これは睡眠がもつ本来の役割、骨休めの意味を忘れた専門家の落とし穴なのである。
わたしたちのからだの骨は、昼間の起きている間、体重を支えて運動をつづけており、骨と骨の繋ぎ目にある「関節頭」と呼ばれる造血器官にかなりの負担がかかっている。
そこで骨休めをして骨を回復させてやればいいのだが、それをしないと、造血機能が衰え、白血球の製造能力が落ちて免疫力が衰えてしまう。
その結果、さまざまな病気を引き起こすことになる。
ぜんそくやアトピー性皮膚炎なども、口呼吸と骨休めの不足によって発症することが多いのだ。
睡眠不足で骨休めを怠ると、一日一兆個つくられる細胞が十分に分化できなくなる。
この一兆個のリモデリングの大半は、血液細胞と、腸管上皮細胞・皮膚の上皮細胞などだが、肝心の血液細胞の増殖を担当する骨や軟骨は、昼間の活動で立ったり座ったりしているときは、からだを支えるために造血機能は停止したままになっている。
この造血機能が働くためには、からだを横にして骨への負担を解除しなければならない。
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